技能実習生とは

技能実習制度とは、日本が先進国として、途上国への技能・技術・知識の移転を目的とした制度です。技能実習生は、日本に324,940人(法務省HPより・2022年末時点)います。国籍はベトナムが54.3%、インドネシアが14.1%、フィリピンが9.0%、中国が8.9%(法務省HPより・2022年末時点)です。2023年の4月に、外国人の日本における労働のあり方を検討する政府の有識者会議が『途上国への技術移転という目的と実態が乖離かいりしている』という指摘があり、現在廃止を検討しているところです。

まずは、技能実習生が日本の企業で働くまでの流れを説明します。

左図(※スマホ表示の場合は上図)の送り出し機関は、
日本に入国して働くことを希望する人たちを募集し、技能実習生の受け入れを希望している日本の企業との面接をセッティングしたり、技能実習生のパスポート申請とビザの発給をサポートしたりしています。
技能実習生は、送り出し機関に支払いをします。

入国後は、監理団体が技能実習生のサポートをします。監理団体は、受入れ企業の技能実習日誌や賃金台帳のチェック、在留期間の更新の為の受験や、新しい在留カードの申請手続きを行います。
受入れ企業は、監理団体に支払いをします。

技能実習生はまず、『技能実習1号』(入国1年目に技能の修得をする活動に従事する者・期間は1年間)の在留資格で入国します。約2ヶ月の監理団体による座学の講習を経て受入れ企業に入社します。入社半年が経った頃に受け入れ企業の職種の実技試験・筆記試験を受験し合格すると『技能実習2号』の在留資格を取得でき、在留期間がプラス2年間に更新されます。

技能実習は3年間で終了し、帰国します。(その後も諸条件が満たされれば、引き続き働くこともできます。)

ここで、私が勤めていた会社で受け入れていた技能実習生についてお話します。我が経営者が技能実習生を雇用した目的は、安い労働力でした。制度の目的とかけ離れているせいで、実際に数多くの問題が起きました。
まず、技能実習生は、日本語は少ししか話せません。英語は全く話せません。OJT(On the Job Training・仕事を実戦で教える方法)において、教える側の説明は伝わらないので、結局ジェスチャーで教えた単純作業をしてもらうしかありません。客先に人工にんくで請求する会社だったのですが、ベテラン職人と技能実習生が同じ単価だったので、もちろんお客様からクレームがつきました。(少人数会社なのに何故か気前よく工事を受注し、人数合わせで作業チームに技能実習生を混ぜていたので、それはそれは信頼ガタ落ちです。)現場で技能実習生を指導する社員から経営者に状況を説明しましたが、経営者は『社用携帯に翻訳アプリを入れれば問題解決』という事でした…。ベテラン社員は(もともとブラックの上、技能実習生に手を取られるので、)ますます時間と体力に余裕がなくなってしまい、技能実習生との溝は深まっていきました。次第に技能実習生との会話がなくなってしまい、技能実習生の日本語上達にもよくない影響を与えました。
技能実習生は、金銭的にも非常に苦労しています。最低賃金ギリギリから、社会保険や税金、住居費・水道光熱費・弁当代が差し引かれ、その少ない手取りから母国の家族への仕送りと、送り出し機関への借金返済をしています。しかも我が社の場合は下宿先は経営者の家の隣で、時々突然部屋に社長が入ってくるという高ストレスです。何度もニュースになっていますが、我が社でも暴力がありました。
技能実習は原則転職不可ですが、それだけは早く緩和した方がよいと思います。2024年以降と言わず、一刻も早く。政府は、人権侵害の防止のため転籍制限の緩和は不可欠としているようなので、その方針でしょうが、とにかく早くしてあげてほしいです。技能実習生の失踪しっそうは10年前から問題になっています。法務省や厚生労働省の方々は、私が勤めていた会社の技能実習生たちと全く同じ仕打ちを受けて我慢できるのでしょうか。今までの名目上の理由である『技術移転』も、正しく『人手不足解消』と早く改めていただきたいです。有識者でなくても、だいぶ前から諸問題に気付いています。そして、『人手不足解消』と目的を改めた後は、最低賃金の上昇に苦労する企業と、日本人の雇用問題をまず議論していただきたいものです。