1.商業簿記(企業会計の実務)
会社の財務諸表を作る技術です。
①企業結合:会社同士が合体する会計
《キーワード》
▢のれん
例えば、ある会社を買収するとします。その会社の資産[現金、建物、機械、商品、売掛金など]と負債[借入金、買掛金など]を調べたところ、資産は100億円、負債は40億円でした。資産から負債を差し引いた純資産[資産-負債、会社に本当にある財産]は60億円になります。しかし、その会社には長年築いてきたブランドや技術力、顧客といった強みがあり、将来も利益を生み出すことが期待されています。そのため、買収する会社は純資産の60億円よりも高い80億円でその会社を買うことにしました。このとき、実際に支払った80億円と純資産60億円との差額である20億円が、のれんと呼ばれるものです。つまり、のれんとは、帳簿にははっきり表れない目に見えない価値に対して支払われた金額を表しています。
▢時価評価
資産や負債を購入したときの価格ではなく、現在の市場での価値で評価し直すことです。たとえば、昔100万円で買った土地でも、今の市場では200万円の価値があるなら、その200万円という現在の価値で見直して計算することを時価評価といいます。
▢連結修正
親会社と子会社の決算書を1つにまとめるときに、グループ会社の内部で行われた取引や重複している金額を調整して消すことです。これにより、親会社と子会社を合わせて1つの会社として、正しい財務状況が分かるようにします。
②連結会計:親会社+子会社を1つの会社として扱う会計
《キーワード》
▢投資と資本の相殺
親会社が子会社の株式を持っていることによって計上している子会社株式と、子会社側の資本金などの純資産を、連結決算を作るときに打ち消し合う処理のことです。親会社と子会社を一つの会社として考えると、グループの中で自分の会社に投資している形になってしまうため、その重複をなくすために相殺します。
▢未実現利益消去
グループ会社の間で商品を売買したときに生じた利益のうち、まだグループの外に商品が売れていないため実際には確定していない利益を、連結決算では取り消す処理のことです。グループ全体を一つの会社と考えると、内部の取引は本当の利益とはいえないため、その利益を消去します。
▢非支配株主持分
子会社の株式のうち、親会社以外の株主が持っている部分に対応する純資産や利益の持分のことです。子会社を連結するとき、子会社の資産や利益はすべて連結されますが、その中には親会社以外の株主に帰属する部分もあるため、その分を区別して表示します。
▢連結精算表
親会社と子会社の個別の決算書を合計したうえで、連結修正や消去の仕訳を加え、最終的な連結財務諸表を作るための計算表のことです。つまり、複数の会社の決算データを整理し、グループ全体の決算書を作るための作業用の表です。
③税効果会計:会計利益と税金計算の差を調整する会計
税金を計算するときの費用にするタイミングと、会計で費用として計上するタイミングが違うことがあります。会社は普段、会計のルールに従って利益を計算します。一方で、税金を計算するときは、税法のルールに従って所得を計算します。この2つのルールは目的が違うため、同じ取引でも費用として認めるタイミングが違うことがあります。例えば、工具器具備品30万円を会計で3年で費用(今年10万円・来年10万円・再来年10万円)にします。しかし、税法では、今年まとめて30万円損金にしてよいとします。すると、今年の差は、税金の費用:30万円、会計の費用:10万円、差額20万円です。これを一時差異といいます。会計の税金費用と実際の税金を一致させるために20万円 × 30%= 6万円を繰延税金負債にします。では、繰延税金資産はどんな時に出てくるのでしょうか。繰延税金資産は、今年は税金を多く払っているけれど、将来は税金が少なくなる時に出てきます。例えば、貸倒引当金というものがあります。将来、売掛金の中に回収できないものが出るかもしれないと考えて、あらかじめ費用を見積もることがあります。将来の損失に備えるため、今年の費用にします。しかし、税法では実際に貸し倒れが起きるまでは損金にしてはいけないとされることがあります。会計の費用:10万円、税金の損金:0円です。つまり、税金の計算では費用が少ないので、課税所得が多くなり税金が多くなる状態になります。将来、本当に貸し倒れが起きたとします。そのとき税法では損金10万円にできます。すると、将来の税金が減ります。
《キーワード》
▢繰延税金資産
会計上は今期の費用として認められていないものが、税法では先に費用として認められる場合があります。このとき、将来の年度では税金の負担が軽くなることになるため、その将来の税金の減少分を繰延税金資産として計上します。
▢繰延税金負債
会計上は今期の利益として計上されていないのに、税法ではすでに利益として課税される場合があります。この場合、将来の年度では税金の負担が増えることになるため、その将来の税金の増加分を繰延税金負債として計上します。
④金融商品会計
・株式:会社が資金を集めるために発行する証券
・社債:会社がお金を借りるために発行する証券
買った人は会社にお金を貸している立場になります。会社は決められた利息を支払い、満期になると元本を返します。
・デリバティブ:株式や金利、為替、商品などの価格の変動をもとにして価値が決まる金融商品
先物取引(将来のある時点に、あらかじめ決めた価格で商品や金融資産を売買する約束をする取引)や、オプション取引(将来のある時点までに、あらかじめ決めた価格で資産を買うことができる、または、売ることができる権利を売買する取引。実際に売買するかどうかは権利を持っている人が選べる、つまり、先物取引のように必ず取引する義務はなく、権利だけを持つ取引)などがあります。
▢時価
その資産を今市場で売買した場合の価格(現在の市場価格)のこと。株式などの金融商品は、日々市場で価格が変わるため、決算のときにその時点の市場価格で評価し直すことがあります。これを時価で評価する、といいます。
▢償却原価
金融商品を取得したときの価格を基準にして、利息などを考慮しながら少しずつ金額を調整していく評価方法。主に満期まで保有する社債などで使われ、満期になると最終的に受け取る金額に近づくように、毎期少しずつ帳簿の金額を調整していきます。
⑤外貨建取引:ドルなどの外国通貨で行われた取引を、日本の会計では円で記録する必要があるため、為替レートを使って円に換算して会計処理すること
取引した時は、取引時レート(取引が行われた日における為替レート)、決算のときにまだ支払っていないドルの借金(買掛金など)がある場合は、決算時レート(決算日の為替レート)で処理します。為替差損益とは、為替レートが変わることによって生じる利益または損失のことです。例えば、ドルの価値が上がったり下がったりすることで、円に換算した金額が変わり、その差額が利益または損失として計上されます。
2.会計学(理論)
会計の考え方です。
①財務諸表
▢貸借対照表:決算日において、会社がどのような資産を持ち、どれだけの負債を抱え、どれだけの純資産があるのかという会社の財政状態を示す財務諸表
▢損益計算書:1年間において、会社がどれだけの収益を上げ、どれだけの費用を使い、その結果どれだけの利益または損失が出たのかという会社の経営成績を示す財務諸表
▢キャッシュフロー計算書:一定期間において会社のお金(現金や預金)がどのように増えたり減ったりしたのかを、営業活動・投資活動・財務活動の三つに分けて示す現金の流れを表した財務諸表
②会計原則
企業の会計は、会社の財政状態や経営成績を正しく示すために、まず事実に基づいて正しく記録するという真実性の原則に従う必要があります。そのため、すべての取引は一定のルールに基づいた正規簿記の方法で記録され、誰が見ても内容が理解できるように明瞭性を保って表示されなければなりません。また、会計処理の方法は毎期むやみに変更せず、同じ方法を続けて用いるという継続性が求められます。さらに、利益を過大に見せないように、損失の可能性は早めに考慮するという保守主義の考え方も重視されています。
③資産評価
▢取得原価主義:資産を帳簿に記録するときに、その資産を購入したときの価格を基準にして評価する考え方。市場の価格が変動しても、原則として取得したときの金額をもとに会計処理を行います。
▢時価主義:資産や負債を評価するときに、現在の市場での価格(時価)を基準にして評価する考え方。市場価格が変われば、その時点の価格に合わせて資産や負債の価値を見直します。
④収益認識:実現主義
収益は商品やサービスを提供して取引が成立し、代金を受け取る権利が確定したときに認識するという会計の考え方です。つまり、まだ販売していない段階や将来の見込みの段階では収益とはせず、実際に取引が成立して利益が確定したときに収益として計上します。
3.工業簿記(製造業の会計)
製品の原価を計算します。
製品を作るためにかかる原価は、主に材料費・労務費・経費の三つの要素に分けて考えます。材料費とは、製品を作るために使われる原材料にかかる費用のことです。労務費とは、製品を作る作業に関わる従業員に支払う賃金や給料などの費用です。経費とは、材料費や労務費以外に製造のために必要となる費用で、工場の電気代や機械の減価償却費などが含まれます。
また、原価は製品との関係によって直接費と間接費に分けられます。直接費とは、どの製品のために使われた費用なのかをはっきりと特定できる費用で、特定の製品に直接かかった材料費や作業者の賃金などがこれに当たります。これに対して間接費とは、特定の製品だけに対応させることが難しく、工場全体の運営のためにかかる費用のことで、工場の電気代や設備の維持費などが含まれます。
4.原価計算(経営分析)
製品を作るための費用は3つに分かれます。材料費(木材・鉄・部品)・労務費(作業員の給料)・経費(工場の電気代・機械の減価償却)です。次に、これらの費用は、製品に直接関係するかで分かれます。例えば、製品Aの材料、製品Aを作る作業員の賃金は直接費、工場の電気代、工場の管理者の給料は間接費です。
工場では、材料を購入するところから原価の流れが始まります。購入した材料は製造に使われると材料費となり、作業員の労務費や工場の経費と一緒に製造途中の製品に集計されます。この製造途中の状態の製品を仕掛品といいます。そして、製造が完了すると仕掛品は完成品となり、勘定科目は製品に変わります。その後、完成した製品が販売されると、その製品にかかっていた製造原価が売上原価として損益計算書に計上されます。つまり、原価は、材料費・労務費・経費として発生し、それが製造原価となり、完成すると製品となり、販売されたときに売上原価になるという流れで移動していきます。
①個別原価計算:製品や注文ごとにかかった材料費や労務費などを個別に集計して、その製品ごとの原価を計算する方法
②総合原価計算:同じ種類の製品を大量に連続して生産する場合に、一定期間にかかった製造費用をまとめて計算し、それを生産した製品の数量で割って一つあたりの原価を求める方法
③標準原価計算:あらかじめ設定した理想的または標準的な原価を基準として製品の原価を計算し、実際にかかった原価との差額を分析して管理する方法
④直接原価計算:製品の原価を計算する際に、売上に応じて増減する変動費だけを製品原価として計算し、固定費はその期間の費用としてまとめて処理する方法
⑤CVP分析:売上高(Sales)、変動費(Variable Cost)、固定費(Fixed Cost)の関係を分析して、どのくらい売れば利益が出るのかを調べる方法

